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しんぐるまざあず・ふぉーらむの小森雅子理事長にお話をうかがいました。

聞き手:イノベーションホールディングス岩﨑(以下、岩﨑)
――今回の「みせしょくパーティー」実現までの流れ
岩﨑:「しんぐるまざあず・ふぉーらむ(以下、ふぉーらむ)」について教えてください。
小森:ふぉーらむのスタートは古くて1980年に当時のシングルマザーたちが集まってできた団体とのことです。最初は同じ境遇のママたちが集まるおしゃべり会のようなものだったと思います。その中で、母子手当(児童扶養手当)の切り下げ反対や拡充などを求めていく活動なども行うようになりました。
当時は今よりも未婚のひとり親に対する風当たりは強く、差別や偏見もありました。「未婚の母」は自分で選んだのだから支援はいらないでしょ?といった雰囲気さえもあったんです。そこで一人では太刀打ちできませんから、同じ境遇の人で集まって社会運動的なことも始めていくようになりました。
現在は規模も大きくなり、全員で集まることは物理的に難しいため、メルマガを通じた情報提供やオンラインセミナーなどを行っています。メルマガには12,000人ほどが登録しています。また、数は少ないですが、シングルファーザーの登録者もいます。そのほか、就労支援や食料支援なども行っています。
岩﨑:メルマガではどんな情報を提供していますか?
小森:就労支援や子育て等のセミナー、定期的に行っている親子のお出かけイベントや、おしゃべり会の情報のほか、企業などから寄せられたご招待企画の募集情報などです。
岩﨑:小森さんについても教えてください。
小森:子どもが3歳の時に離婚をしました。派遣社員などで子育てしながら働いているうちに、社会の矛盾を感じ、子育て支援などの社会課題について取り組んできました。その後は、社会福祉士の資格をとりまして、当団体で福祉関係の仕事をして今に至ります。
岩﨑:弊社では、いろいろな団体や地域の方とお話ししていく中で、貴団体の名前を聞くことが多かったので、大きな団体という印象でした。
子ども支援の有識者や、最前線で働く人からお話をうかがっている中で、シングルマザーの家庭は外食の機会が少ないと聞きました。それなら、私たちが力になれることがある、と思い、みせしょくパーティーのご提案をさせていただきました。
小森:食事そのものをいただけるのは、嬉しい。その分の食費が浮きますから。でもそれ以上に、お金を気にせずに「親子の時間」を安心して過ごせることがとても魅力なので、希望者も多いです。するとどうしても抽選を行うことになり、参加者を選ばなければならないのが、辛いところです。
――子どもを笑顔にするなら、親を笑顔にすればいい
小森:今回5月のご招待は貸切での開催でした。参加者アンケートでは、他のお客さんの目を気にせず食事を楽しめたという声がありました。食事がおいしかったのはもちろん、店員さんが気さくに話しかけてくださり、子どもにとって親や先生とは違う大人とコミュニケーションを取れたことが良かったという声もありました。
当日の様子はこちら
今回のみせしょくパーティーはシングルマザーの親子を招待しました。
岩﨑:お店を貸切で開催できたのは、「うしひろ」さんのご協力でもあります。
5月の参加者からいただいたアンケートを読ませていただきました。その中で、「親御さんが安心している姿を見た子どもが、ほっとしている」という記述があり、胸に刺さりました。この言葉が、子どもだけでなく、親子を招待する本質なのだろうと思いました。
弊社としても、「親子招待」は単発で終わらせる企画ではないと考えていますので、引き続き開催していきたいと思っています。
小森:お母さんが元気になると、子どもたちにも割とすぐに影響が表れます。お母さんが安心して食事を楽しめることは、子どもの安心や笑顔にもつながるのだと思います。

――シングルマザーの経済状況は厳しい
岩﨑:5月のアンケート結果から、みせしょくパーティーはお子さんからもお母さんからも好評だったことがわかり、弊社も嬉しいです。しんぐるまざあず・ふぉーらむさんにつながっているシングルマザー家庭の経済状況は、実際にどのような様子でしょうか?
小森:年収で言うと300万円くらいの方が半数以上かなと思います。中には正社員として安定した収入のある方もいらっしゃいます。それでも、「シングル」という同じ境遇の人同士でつながりたいという気持ちから参加している方もいますね。
でもやはり、経済的な余裕がない人が大半ですし、余裕があったら少しでも貯金したい、子どものために使いたいという人が多いです。
その上、親は外食とか食べ物にお金を使うことに常に罪悪感があるんです。子どもたちも、食べ放題なら違いますが、もう一品頼みたいけどちょっと遠慮する。もう一皿頼みたい、とは言えないみたいな雰囲気がある。そういう意味ではやっぱりご招待ってありがたいなと思います。
岩﨑:罪悪感ですか。
小森:外食することは「お金を使うこと」と考えてしまうゆえの罪悪感です。一方、外食へ行かないことに対しても「外食にも連れていってあげられない」という罪悪感を抱く。しかし、食べに行ったら行ったで、「お金を使ってしまった」という罪悪感が…。世の中、頑張れば自己評価が上がる、自己肯定感が上がるものですが、外食には行っても行かなくても母親は自分を責めてしまう。負のスパイラルに陥っている人はいるんです。それは見ていて辛いですね。
そこに、こういった食事のご招待があると、負のスパイラルから抜けることができます。少なくともその日のお母さんは元気になれる。ちょっと元気な日がだんだん増えていくといいなと思うんですけどね。
岩﨑:中学卒業後、シングルマザーとして頑張っている方もいらっしゃると聞きました。
小森:こども家庭庁の調査では、シングルマザー、シングルファザーを合わせて1割くらいが中卒です。一般的には高校へ進学する人がほとんどですから、それと比べると割合は高いですね。高校へ進学しても、中退している人もいます。中には在学中の妊娠をきっかけに高校を辞めた人や、もともとの家庭の生活が厳しく、学業を続けられずに働き始めた人もいます。
岩﨑:シングルマザーで経済的に厳しい方の中には、お母さん自身も経済的に厳しい環境で育ってきた方がいる、ということですね。
小森:全体から見るとそういう人ばかりではありませんが、実家も貧しい、実家との関係が良くないから頼れないという人が生活困窮したり、気持ち的に孤立してしまったりすることがある。そういう状況の人が、私たちの団体を探してたどり着いてくれているのかなとは思います。

――「親子の時間」を提供する
岩﨑:食事に招待すること以外に、ひとり親のお母さん、お父さんにはどのような支援が必要なのでしょうか?
小森:有効なのは、やはり「お金」です。お金は何にでも変えることができますから。お金は「時間」にも変えることができます。時給で働く人は、自分の時間をお金に変えているわけです。今月は、少し余裕があるから休みを取ることができる、とかね。逆にお金がないと、子どもとゆっくりする時間さえも、お金に変えなければいけない。
シングルマザーの中には、非常に長時間働いている方もいます。ダブルワークやトリプルワーク、副業をしたり、仕事の前に新聞配達をしたりするなど、かなり厳しい生活をしている方もいます。
ところが、子どもと過ごす時間を削って働くと、子どもに寂しい思いをさせていると思って自分を責める。しかし、労働時間を削って子どもとの時間を増やせば、収入が減って、これしか稼げないと思ってまた自分を責めてしまうんです。
岩﨑:「親子の時間」という観点で考えると、みせしょくパーティーに親子で参加してもらうことがキーポイントのような気がします。親が働いている時間に、子どもだけを食事に招待することもできますが、それでは親子の時間は作れない。親子で招待すれば、その時間分の時給は減ってしまうかもしれませんが、食事代が浮くし、子どもとの時間も確保できます。
私たちは、「食支援」という考えはなくて「子どもたちに外食を楽しんでほしい」という、その想いが原点なんですよね。どの子にも平等に外食を楽しんでもらいたいと思っています。
その時、経済的な余裕がないから子どもに「あなただけ食べてきなさい」というより、「親子で一緒に食べに行こう」の方が、子どもに声をかけやすいですよね。
――子ども食堂は意外と利用されていないのか
小森:うちの団体のアンケートで、子ども食堂の利用状況について質問をしたところ、8割の人が子ども食堂を利用していないことがわかりました。この8割には、以前行ったことはあるけれど、今はもう行っていないという人を含みます。
利用していない理由には、子ども食堂が「近くにない」というのもあります。子どもの足で行けるところがない。東京と違って地方ではまだまだ子ども食堂の数が少ないですから。でもそれ以外に、子どもが不登校だったりすると、周りの人に見られたくないから行きたくないといった要因もありました。
子どものためにと、子ども食堂を一生懸命やってくださっているというのは本当にありがたいことなのですが、それでもやっぱり利用できない人が結構いるなというのが改めてわかりました。なので、いろんな形で食事の場を提供していただけるのはいいですね。
岩﨑:シングルマザーだからといって、みなさん全員が経済的に困窮しているわけではないとは思いますが、「シングルマザー」というキーワードでお声がけすると、なかなか外食に行けないお子さんたちにアプローチできるのかなと思うのですが、いかがでしょうか?
小森:児童扶養手当をもらっていることが、生活困窮の一つの指標であると言われていますが、児童扶養手当の所得制限を上回る収入、年収で400万円弱の人も決して楽な暮らしではありません。なので、ひとり親というキーワードで募集をしてもいいのかなとは思います。

――「自己責任」で片付けてもいいのか
岩﨑:「自己責任」という言葉は、ひとり親の人たちはこれまでにもかなり言われてきたと思うのですがいかがでしょうか?
小森:言われすぎるほど、言われています。そう言われて、ひとり親は自分を責めますし、支援につながりにくくなります。私たちは、もっと頑張りなさい、もっと稼げるでしょ?とかは絶対に言わないです。体調を崩している人には、少し休んだほうがいいよ、そのための方法を一緒に考えましょう、と提案します。
中にはおしゃれで楽しそうに見える人もいるとは思うんです。でもそういう人にも悩みや不安があり、シングルマザーはいろんな制度があって、ちゃっかり生きていけるでしょ?みたいに言われることは間違っています。
――時代と共に変わるイメージ
岩﨑:ひとり親家庭の子どもたちを笑顔にするために、貴団体での今後の展開を教えてください。
小森:制度や社会の状況など、ひとり親家庭を取り巻く環境は年々変わっています。その変化にひとり親家庭がついていけるのかという心配があります。そこで、変化にどう対応していったらいいのか、必要な情報を発信していきたいと思っています。
現在、うちの団体で行っている支援メニューは多岐にわたっていて、会員それぞれの事情が異なるので、多くの人に支援を届けたいという思いからです。「ひとり親家庭」と言っても、それぞれが置かれている立場や状況は違いますから、きめ細かい対応をするには、いろいろな支援を用意しておく必要があります。
会員で最も多いのは40代で、20代は少ないです。シングルマザーというと、赤ちゃんを抱えて困っている若い母親というイメージがあるかもしれません。しかし、実際には子どもの身体的なお世話からは少しずつ離れる一方で、教育費などお金がかかる世代が中心です。収入を増やすために働き方を変えなければ、と考える方も少なくありません。また、今の40代には就職氷河期世代なので、学校を卒業してから一度も正社員として働いたことがない方もいます。結婚や出産で仕事を辞め、家庭に入った後にシングルになった方も、ブランクがあるため再就職が厳しい場合があります。人手不足と言われていますが、正社員になるのは簡単ではありません。
会員から話を聞いていると、20代、30代のシングルマザーはこれまでとは考え方が随分変わってきていると感じます。人が増えているのもそのひとつです。
また、うちの会で行っている「電話相談」の利用は以前より少し減っていると感じます。会員からは、AIに話し相手になってもらっているという話も聞きます。「私のことを一番分かってくれるのはAIだ」という方さえいます。その時代に合った支援とは何かを、これから考えていかなければならないと思います。
しかし、ひとり親であることの孤独感、孤立感は以前と変わらず、やはりあります。その気持ちをどうしたらいいのか分からず、うちに入会する方はまだまだいます。ひとり親家庭の親も子どもも笑顔になるにはどうしたらいいか。これまでも、これからも向き合っていきます。
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小森雅子さん(しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事長・社会福祉士)
社会福祉士、国家資格キャリアコンサルタント。同会の事務局などで支援に携わり、2025年に理事長に就任。シングルマザーとして子育てをした自身の経験も活かし、全国のシングルマザーの就労支援、電話相談やセミナー、政策提言など、多岐にわたる活動を行っている。
特定非営利活動法人 しんぐるまざあず・ふぉーらむホームページ
https://www.single-mama.com/